三井住友銀行のネットバンキングサービス「SMBCダイレクト」は、自社サービスの表示および動作を、携帯電話全機種にわたって実機検証している。実機検証の必要性とKSKへの評価についてネットバンキンググループ グループ長 斉藤康彦氏(写真右)、部長代理 小西裕二氏(写真左)に詳しく伺いました。
もくじ
- SMBCダイレクトの概要 ~ 「実機テストサービス」の活用状況
- なぜSMBCダイレクトのすべてのサービスを、すべての機種で、実機検証するのか
- 実機検証を、システム開発会社に任せず、検証の専門会社に依頼することの意義
- 意義1. 「『システムを開発した人』が『厳しい検査』を行うことは困難である」
- 意義2. 「システム開発会社では、携帯電話の機種『すべて』を検査できない」
- 意義3. 「外部の専門家に頼んだ方が結局コスト安になる」
- 三井住友銀行が、KSKを選んだ理由
- 2年間、共に仕事をして分かったKSKへの評価・印象
- 今後の期待
※ 以下の文章においては、「SMBCダイレクト」という記載は、特にことわりのない限り「SMBCダイレクト携帯電話版」を指します。同様に「三井住友銀行」という記載は、SMBCダイレクトの運営事業部である「三井住友銀行 マスリテール事業部」を指します。
※ この事例の中の「すべての機種の携帯電話」という用語についての説明 → こちらをご覧ください。
SMBCダイレクトの概要 ~ 「実機テストサービス」の活用状況
── SMBCダイレクトについて教えてください。
三井住友銀行の個人向けインターネットバンキング・モバイルバンキング・テレホンバンキングの総称で、2008年12月末現在の契約者数は約902万人です。
2006年からは、KSKの「実機テストサービス」を活用して、SMBCダイレクトの「すべてのサービス」が「すべての機種の携帯電話」で正常表示、正常動作することを目視確認しています。
まず2006年に当時発売されている携帯電話の全機種を検査しました。その後は、「SMBCダイレクトに新サービスが追加されたら、そのサービスを、その時点での全ての機種の携帯電話でテストする」という作業を繰り返しています。
なぜSMBCダイレクトのすべてのサービスを、すべての機種で、実機検証するのか
── 「SMBCダイレクトのすべてのサービスを、すべての機種で、実機検証すること」の三井住友銀行にとっての意義をお聞かせください。
三井住友銀行は、「お客様に選ばれる銀行」、「お客様の一番身近な銀行」であり続けるために、お客様の「一番身近な持ち物」、「直接顧客接点」である携帯電話上でのサービス向上を重要視しています。
お客様が、自分の携帯電話でSMBCダイレクトのすべてのサービスを快適に使えれば、お客様は三井住友銀行に良い印象を持ってくださるでしょう。逆に、SMBCダイレクトのサービスが一つでも上手く動作しない場合は、お客様は悪い印象を持ち、最悪の場合、「静かに離れて」いくでしょう。
お客様にSMBCダイレクトを「いつも使う一番身近なサービス」にしていただくには、お客様の携帯電話で、全サービスが必ず確実に表示・動作できなければいけません。そのためには「SMBCダイレクトのすべてのサービスを、すべての機種で、実機検証すること」が必須になります。
実機検証をシステム開発会社に任せず、検証の専門会社に依頼することの意義
── 三井住友銀行が、サービスの実機検証をシステム開発会社に任せず、KSKという検証の専門会社に依頼しているのは、なぜですか?
三井住友銀行が「SMBCダイレクトの実機検証をシステム開発会社に任せず、専門会社に依頼している意義」は、次の三点です。
- 『システムを開発した人』が『厳しい検査』を行うことは困難である
- システム開発会社では、携帯電話の機種『すべて』を検査できない
- 外部の専門家に頼んだ方が結局コスト安になる
意義1. 「『システムを開発した人』が『厳しい検査』を行うことは困難である」
── 順々にお聞きします。システム会社ではなく専門会社に検証を依頼する“意義1.「『システムを開発した人』が『厳しい検査』を行うことは困難である」”とは具体的には?
実機検証は、「開発段階で見落としがちなミス」を発見するために行うものです。そのためには、検証を行う人は、「きっとミスがあるはずだ」と思いながら、意地悪く、疑り深い心で、システムを見る必要があります。
しかし「システムを開発した当人」は、「このシステムは自分が全力をあげて作った。ミスがあるはずがない」という気持ちになりがちです。検証には、不向きな精神状態です。
実機検証は、「(よい意味で)システムに対して思い入れがない」外部の会社に依頼する方が検査の品質が上がると思います。
意義2. 「システム開発会社では、携帯電話の機種『すべて』を検査できない」
── システム会社ではなく専門会社に実機検証を依頼する“意義2.「システム開発会社では、携帯電話の機種『すべて』を検査できない」”とは?
「すべての機種の携帯電話」での実機検証を行うには、「日本で発売されている、すべての機種の携帯電話」を所有している必要があります。しかし、システム開発会社が携帯電話の全機種を保有(購入)することは無理です。そうした「検証インフラ」は、KSKなど検証の専門会社にしかありません。
意義3. 「外部の専門家に頼んだ方が結局コスト安になる」
── システム会社ではなく専門会社に実機検証を依頼する意義3.「外部の専門家に頼んだ方が結局コスト安になる」とは?
個人的には「業務というものは、得意な人(会社)が得意なことをやるのが、結局コスト安になる」と考えています。システム開発会社が、無理やり携帯電話を集めて不慣れなテストを行うよりも、検証の専門会社の経験豊かなスタッフがテストする方が、テスト品質も向上し、また人月ベースの単価も安くなることが期待できます。
三井住友銀行が、KSKを選んだ理由
── 三井住友銀行が、実機検証の依頼先としてKSKを選んだ理由は何ですか?
様々な理由がありますが、最も大きな理由は、2006年に、長年にわたりSMBCダイレクトのシステム開発を委託している会社がKSKを肯定的に紹介してきたことです。この紹介により、KSKの実績と仕事の品質に信頼感を持ちました。
以来、2年後の今日に至るまでKSKに実機検証を依頼し続けています。
2年間、共に仕事をして分かったKSKへの評価・印象
── 「KSKの実機テストサービスを2年間、実際に使い続けてみての評価」をお聞かせください。
KSKの実機テストサービスは以下の5点が良いと思います。
- 「検証報告書にスクリーンショットが添付されている」
- 「報告書がユーザー視点で書いてある」
- 「エラーの原因特定を支援してくれる」
- 「未知のエラーに対する先取り対応」
- 「セキュリティ」
良い点1.“「検証報告書にスクリーンショットが添付されている」”ことについて
KSKの検証報告書には、文章だけでなくエラー画面のスクリーンショットもついています。文章だけの報告では実際のエラー内容が明確に把握できませんが、スクリーンショットならば、正確で紛れがありません。良い報告書です。
── ここでKSKに質問です。KSKでは携帯電話のスクリーンショットをどのようにキャプチャしているのですか?
携帯電話のスクリーンショットは、KSKが自社開発した、“MystaPad(マイスタ・パッド)”という名の携帯電話の画面キャプチャ装置により、次のような手順でキャプチャしています
- 携帯電話をMystaPad(写真右)に挟み込み、エラー画面を「撮影」します。
MystaPadの中には小型デジタルカメラが内蔵されています。
- キャプチャした画面をパソコンに取り込みます。
- 取り込んだ画面を元に、スクリーンショット入りの検証報告書を作成します。
良い点2.“「報告書がユーザー視点で書いてある」”ことについて
KSKは「検証は技術者視点で。報告書はユーザー視点で」という姿勢を持っています。わたしたちは、SMBCダイレクトの「ユーザー満足度」を高めるために実機検証を行っているわけですから、報告書が「ユーザー視点」で書かれていることは、理にかなっています。
良い点3.“「エラーの原因特定を支援してくれること」”について
KSKの報告書には「こんなエラーを見つけました」という事実報告だけではなく、「エラーの原因は○○と予想されます」という原因予測も記されています。実機検証は、「エラーを見つけ、そして直す」ために行うものなので、エラー原因予測が記されているのは、ありがたいことです。
良い点4.“「未知のエラーに対する先取り対応」”について
KSKは、「機種A」でエラーを見つけた場合、「機種Aの系統機種である機種B、C、D…」でも検証を行ってくれます。その場合、ある程度の確率で、「系統機種B、C、D…」でも同様のエラーが見つかります。KSKからは「長年、実機検証を続ける中で、携帯電話会社の各機種の仕様系統について情報を体系化している」、「その情報に沿って『網羅的な全機種検証』と『体系的な検証』とを同時に行い、検証の精度を高めている」との説明がありました。
良い点5.“「セキュリティ」”について
KSKは、プライバシーマークを取得し、検証ルームへの出入りにも入室規定を設けるなど、セキュリティを重視しています。わたしたち顧客のサービス機密を守ろうとする姿勢は、好感が持てます。
今後の期待
── KSKへの今後の期待をお聞かせください。
SMBCダイレクトは、今後も、お客様にご満足いただけるようサービスの向上に注力していきます。そのためには、ここまで述べたとおり、「すべてのサービスを、すべての機種の携帯電話で、実機検証すること」が重要です。
KSKには、「携帯電話サービス検証の専門会社」として、「三井住友銀行の顧客満足度向上の取り組みの一翼を担っている」という意識でご支援をいただくことを希望します。
今後もお客様のニーズにお応えしながら、新しいサービスも展開してまいりますので、引き続き、ご相談させていただければ幸いです。これからもよろしくお願いいたします。
三井住友銀行様、本日はお忙しい中、貴重なお話をありがとうございました。
※ この事例の中の「すべての機種の携帯電話」という用語についての説明
この事例の中で「すべての機種の携帯電話を実機検証した」という意味の記述があるときの「すべての機種の携帯電話」という表現についての注釈を以下に記します。
- SMBCダイレクトでは、EZwebやYahoo!ケータイなど少数の一部機種に、サービスが対応していません(未対応機種の詳細情報)したがって、それら数機種では実機検証は行っておりません。
- 携帯電話においては、「型番は違うが中身は実質的に同じ」という機種もあります。そうした機種においては、「代表する一つの機種」だけを、実機検証しております。
※ SMBCダイレクト(三井住友銀行)のWebサイト
※ 取材日時 2008年12月
※ 記載内容、数字はすべて取材日時の時点でのものです。
※ 取材制作:カスタマワイズ